「好き」と素直に言えること Saying "Yes" To Your Creativity


私が懇意にしている東京の銭湯屋さん「日の出湯」の店主の書く文章が面白い。

彼、田村さんはブログを通してその面白さが出版社の目に止まり、
本を出版することに成功した。

(ちなみに2年前に出版されたのだが、
未だに書店で平積みされている程人気だそうだ。)

何も田村さんの本を宣伝したいわけではなく(笑)、
以前彼とブログの書き方について話をしていた時に
「ブログを書く時は、誰か一人内容を伝えたい相手を思い浮かべて、
書くといいですよ。その人宛のラブレターという意識で書くのです。」
と言われたことがある。

その時は、ふーん、そういうものか、と思っただけで
あまり気に留めていなかった(おい←ツッコミby田村さん)。
で、時は流れ、今月に入って、絵を描くプロセスを変えていく中で
上述した彼の言葉がふっと蘇ってきたのだ。

●今までの描き方
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これまではどのように描いてきたかというと
形や言葉や情景からインスピレーションを受け、
それをもとにバーっと描いていた。
閃いたものを逃さないように、一気に描くことが多かった。

具体的に誰かに向けて何かを描く、というよりも
とにかく描いて、描き終えてしばらく経ってから、

「あ、これはこういう意味だったのか。」
と後から理解がやってきていた。

必然的に作品のタイトルを決めるのも一番最後だった。

●今取り込んでいる描き方
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では、今はどのような描き方に挑戦しているかと言うと、

冒頭の田村さんの言葉です。笑。
「この人にこれを伝えないと後悔すること」ってありませんか?
会っている時は、たわいもない話ばかりしているのだけども、
帰り際に「あ、この人にあのことを伝えたかったなぁ」って思うこと。
あるいは、伝えたいことがいつも心のうちに秘めているけども、
面と向かって言うのは恥ずかしいことってありません?

例えば、家族に対する感謝の気持ちとか。
というように
「この人にだけは、これをどうしても伝えたい」
という内容を思い浮かべ、その人をイメージして描いている。

要は、最初に描く内容を決めてから、
描き始めるようにしているのだ。

●何が変わったか
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そうすることで最も変わったことは何かというと描く時間だ。

これまではブワーッと一気に描いていくことが多かった。

今は、画面を眺める時間が多くなった。

例えて言うなら「この人にこれを伝えるために最も効果的な色と形はなんだろう?」
と考えながら、画面が返事をしてくれるのを待っているような状態。
もちろん実際に声が返ってくるわけではない。

だけども、
「あ、ここだ。」と思う場所ができ、
そこに一気にドンッと描く。
そして、またしばらく眺める。
という行為を繰り返している。
描くプロセスが変わったことで

絵に如実に変化が現れたか、と問われれば
そうではないと思う。

でも、自分の心の持ちようは段違いだ。
待つ時間を楽しめるようになったのだ。

今までインスピレーションがやってきたら
「描かないとまずい!次いつやってくるのかわからないし!」
という焦燥感に似た状況で描いていることも多々あった。

今は、そのインスピレーションがやってくるのを待つというよりも
インスピレーションを手繰り寄せるようなイメージ。

何もやってこない時は、ひたすら描きかけの作品を眺めている。
心が静かな状態である。

●いつまでも続いていくのである
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もちろんまだ実験途中のため、最終的にどうなるかは、
やっぱりわからない。(←おい!やっぱりわからんのかいな!)

でも、少なくとも、今の絵の方が、私は好きだ。
人がどう言おうと、私は「この絵が好き」だと言えること。

完璧とは程遠くても、その歩みに向かって歩いている。

そういう足取りが以前よりも、少し強くなったように感じている。

旅はまだまだ続く。

●一言編集後記
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誤解がないように付け加えると
今までの作品が嫌いだと思いながら
発表していたことは、もちろんない。
ただ、これまで生み出してきたものを一旦
否定しないと、次のステップにいけない自分が
いるだけだ。
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2017.8.22 Tuesday(*KAYO-BI)
Kayo Nomura
*KAYO-BI:毎週火曜日に更新しています。

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