村上春樹の「影」Dark Tunnel of Narrative

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「好きな作家は誰か?」
と聞かれたら迷わず
「村上春樹」と答える。
彼の世界に魅了されたのは約6年前、
東京で働いていた頃、
今や小説家として活躍している同僚が
「村上春樹は読んだほうがいいよ」
と何度も紹介してくれて以来。

実は、大学生の頃に「ノルウェイの森」を読破したのが、
その頃は、意味が全くわからなず、それ以来彼の本には近づいていなかったのだが
意を決して読んでみた、当時話題となっていた「1Q84」を手に取ってみたら
ぐんぐん引き込まれて、彼の描く世界観に魅了されていったのだった。
だが、今日は彼の小説について記したいわけではない。
彼のスピーチに目を向けていきたい。
 
●「影の意味」
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去る10月に、村上春樹はデンマークの童話作家のアンデルセンの
「ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞」を受賞し、
その授賞式でスピーチを行ったのだ。
タイトルは「影の意味」。
スピーチの内容を簡単に要約すると、
アンデルセンの短編小説「影」の話を通して、
彼自身が小説を書く時のプロセスについて伝えている。
その全文を読んだ時に、軽く衝撃を受けた。
まさに私がいつも言っている
「影と光」を通して作品を追求すること
と、通じる内容だったからだ。
無論、自分が世界の村上春樹と同じことを考えているぜ!
と言いたいのではなく、
彼の作品の全面的な根っことなっているように感じるし、
また、これほど多く世界に受け入れられているからには、
誰もが共通項として「光と影」を持っているように思えてならないのだ。
※ちなみに、どれほど村上春樹が世界中に読者がいるのか
興味ある人は彼のエッセイ「職業としての小説家」を一読ください。
 
●「光と影」とは?
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改めて、自分の言葉で「光と影」について捉えてみると
以下のようになる。
私たちの人生は、地球のように一個の丸ようなものだと考えている。
そして、その丸には太陽が日中、日を照らすように、光が当たる。
やがて日が沈むと、夜が来て、暗闇が私たちを支配する。
極端に昼間が長い場所がないように、
極端に夜が長い場所もない。
(緯度の関係で夏は夜9時まで日が昇っている地域もあるが、
その分、冬は昼間の3時には暗くなっているから1年で帳尻は合う)
同じように、
人生には「すごく嬉しい」という出来事と
「死んじゃいたいぐらいイヤなこと」がある。
良いことばかり、つまり、光ばかりの人はいない。
これは断言する。
表面上はキラキラした人生を送っているように見えても
中身はどろどろしている場合も多いにあるし、
他人からみたら羨ましい生活を送っていたとしても、
当の本人にとってはそれが苦しみに感じられることもあるからだ。
 
●受け入れる先に見えるもの
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何が言いたいかというと、
光と影は、両方、共にある、
ということ。
光ばかりを追いかけると、
とんでもないどんでん返しが待っている。
それを物語にしたのが、アンデルセンの物語「影」であり、
その影と向き合いながら作品を生み出し続けるのが
村上春樹なのである。
おそらく、ということになるが、
彼は多くの方に賞賛され、受け入れられている反面、
それと同等の方に避難され、敬遠されているはずだ。
昔の私がそうであったように。
万人に受けるものはない。
そして、それは当然のことなのだ。
同じように、完璧な人もいない。
どれだけ完璧に見えようが、
本人からしたら欠陥と思える箇所が
必ず、ある。
 
だから、結局のところ、
私たちは受け入れていくしかない。
起きうるすべての出来事を
そして、光と影を共に受け入れた先に見えるもの
それは、、、また次の機会に譲ります。
ただ、何があっても、必ず
日は、必ず、また、昇るもの。

追伸1:
来年2月に村上春樹の新刊が出るそう。
なんとも楽しみだ。
追伸2:
村上春樹についてはこれからも随時綴っていく予定です。

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2016.12.6 Tuesday(*KAYO-BI)
Kayo Nomura
*KAYO-BI:毎週火曜日にブログを更新しています。

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