旅の効用 Travel and Mind
束の間の旅に出た。
このような時期だから憚れる気持ちもありつつ、
それでも、今、行くことがとても大切だったことを思い知ることになる。
まずは長年行ってみたいと思っていたノグチイサム庭園美術館へ。
自然と共に生き、インスピレーションを得、制作していた姿が思い浮かぶ。
山の上から一望できる眺めは、人間の小ささと、自然の偉大さを感じさせてくれるものだった。
当たり前だけども、人間は自然の一部であり、ゲストに過ぎない。
そんなことに思いを巡らせられる庭園だった。
庭園自体は撮影禁止だったため、おびたたしい数のスケッチを記録として残した。
続いて、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館へ。
建築物自体もカッコよく、ふき抜けがあり、まちのシューレさんが運営しているカフェも併設、さらには美術図書室もあり、一日をかけて過ごせそうな空間だった。
猪熊弦一郎さんが日経新聞の「私の履歴書」に掲載された連載が一冊の本になっているものがギフトショップにあり、迷わず購入。その日宿でゆったりお風呂に入りながら読破した。
翌日は、来年香川で展示をする方と一緒に会場視察に行き、オーナーの方と軽く打ち合わせ。
実験室のような場を繰り広げたい。
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旅に出るということは、凝り固まった思考をほぐす役割をもつ。
ひとつの枠組みに固定されていた視点を解き放つ役目を持つ。
出歩く機会が少ない2020年。
その期間が長くなるにつれ、毎日同じリズム、風景、パターンで過ごすことを強いられた。
知らず知らずのうちに固定化された枠組み、それに伴いこびりついたオリのようなもの。
まるで何日も洗っていないシーツを青空のもとに干すような
ずっと溜まっていた埃を叩いてまっさらにするような
何年も着ないまま眠っていた服を断捨離するような
そんな行為に、旅は、似ている。
旅に出るということは、本来の自分に戻るための手立てにもなる。
リセットされた心で、年末まで駆け抜けていこう。
2020.11.24
Kayo Nomura