物語を生きるということ The Story of You and Me

最近、嬉しいお便りをいただくことが多い。
メールで頂戴したり、DMで頂いたり、はたまたお手紙で。

自分の描いている内容、やっている活動がどれほど人の役に立っているのか実感することが少ないゆえ、(特に個展がなくなってしまうとなおのこと)、上記のような形で頂く声が、本当にありがたい。

お一人おひとりになかなか返信ができていませんが、
目を通しているのは勿論、おりに触れ、何度も読み直し、逆に勇気づけられています。

 

話が飛ぶけども、最近村上春樹の
「アンダーグラウンド」と「約束の場所で」を少しずつ再読している。

1995年に起きた地下鉄サリン事件の
被害者と信者・元信者を村上春樹がインタビューした内容を本にまとめたものだ。

もう25年も前のことだから、もしかしたらご存知のない方もいるかもしれないけども、
当時中学生だった私の記憶に深く刻まれた事件だった。

村上春樹さんの本では、被害にあわれた方の事件当日のことだけではなく、それまでの人生、そして事件に遭われてからどのように人生が変化していったのか(あるいはしなかったのか)について、書かれている。元信者や現在も信者の方についてもそう。何でオウムに入ったのか、それで人生がどうなっていったのか。

割とリアルに生々しく描かれているこの本を何故このタイミングで読み直しているのかというと、やっぱりコロナに結びつくのだが…。先月あたりから感染者数も死亡者数も桁違いに伸びていて、現時点では167180人の方が亡くなっている。

当たり前だけども、その方達にはそれぞれの人生があった。
数字で見ると無味乾燥だけども、血の通った人生があった。

そして、また当然、これを読んでくださっているあなたにも、
あなたの人生がある。

 

冒頭の話に戻りますが、先日オンラインショップでブックカバーを
購入してくだった方からお手紙をいただきました。

その中には、彼女の現在のお仕事、生活、
そして将来の夢が綴られていました。
思わず、その手紙をそっと抱きしめた。

はたまた昨年、依頼制作を依頼くださった方からメールを頂きました。

そこには私が先日オンラインで作品を販売することを
決意した内容に対するご感想が綴られていました。

「オンラインでの販売強化へのご決断に拍手を送ります」とありました。

そして、
「これからもたくさん描いてください。素敵な絵の世界を私たちに見せてください。
そして、また野村さんの展示会に足を運べるのを楽しみにしています。」
と締め括られていた。

またいつでも読めるように、未読にして受信トレイを静かに閉じた。

 

気軽に人に会うことができないもどかしさ。
生活の基盤が変わりゆく不安。
いつでまでのこの状態が続くのか、漠然とした苦しさ。

それでも、今、私もあなたも、その物語の人生の主人公として、生きている。
2020年がどのようにして語られることになるのか
それは振り返ることでしかわからないかもしれない。

でも、一つ言えるのは、
あなたにしか描けない人生の物語があって
私にも私にしか創ることができない物語がある。

だから、今がどんな状況であっても、
今できることをやっていくこと。

自分の物語を、
大手を振って、
紡いでいこう。

 

2020.04.21
Kayo Nomura