詩の体験 The Poet Inside Me

以前、絵描きになる前にシンガポールで働いていた。
日本の企業が海外展開をするためのお手伝いをする仕事に携わっていた。

ベンチャー企業ゆえのフットワークの軽さとそれに伴う責任、
一人何役も背負う責務、土日関係なく働く風土。

求めて入って会社だったとはいえ、つらかった。
心は鉛のように重かった。

体調を崩してベッドの上に寝っ転がっていた際、ふっと本棚に目をやると、
仲良くさせていただいていたとある出版社の編集者の方から
日本を出る際に餞別として頂いた詩集が目についた。

それまで正直、詩に興味などなかった。
パラパラとめくりはしたものの、きちんと読もうとは思えなかった。
わかりやすい平易な文章の方が好きだったから。

それでも、彼からいただいた坂村真民さんの『筆の詩、墨の花』。
心が弱っているときにこそ、詩というのはストンと懐に落ちていくものなのかもしれない。

それまで見過ごしてきた言葉と、その言葉の奥に潜む奥深さに心が震えた。
一ページ、また一ページ、と舐めるようにしてページをめくった。

ある詩のページを前に、その指が止まった。

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一度

人は一度
死なねばならぬ

日は一度
沈まねばならぬ

光は一度
闇にならねばならぬ

これが宇宙の教えだ

このことがわかれば
大概のことがわかる

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光を追い求めて、海外で働こうと思って行動した。
でも、それは、闇から逃げるための行為だったことに
少なからず気づいていた。

闇になるのがそれでも、怖かった。

その気持ちを、この詩は、包み込んでくれた。

最近、詩を書くことを覚えた。
その時に、思い出すのは、上記の詩の体験だ。

絵を描くこととはまた違った感覚で、
でも、どこかでとても似ている体験として
書き進めていっている。

三月の銀座の個展(詳細▶︎CLICK)では、絵と共に詩を展示したい。
そう思っている。

 

2021.02.16
Kayo Nomura