旅をする理由-その2- Outside Studio
今回のKAYO-BI JOURNALは、先週の続きです。
ギリシャのサントリーニ島から再びイタリアに戻り、ポルトフィーノという港町に立ち寄り、
現在は、スイスの国境沿いのコモ湖に来ています。
早速ですが、いきなり結論です。
旅をする理由の2つ目は野外制作をするため、です。
日本ではいつも、室内にあるアトリエで描いています。
完備された空調と必要な画材が全て揃っている環境がそこにはある。
でも、窓から見える景色はお世辞にも美しいとは言い難い。
煙突のような電柱と黒い電線。
まとまりのない色彩と形の家やマンション。
コンクリートの車道とほとんど緑のない歩道。
かたや、ヨーロッパの景観は、それはもう、眺めているだけで
ワクワクするように色彩感覚と統一感です。
フィレンツェは全体的に赤色と茶色が混じったような色合い。
いたるところに木が植えられ、花が咲いています。
サントリーニは真っ白な建物と澄んだ美しい海が
どこまでも続いていく景色。
外に出ると太陽がさんさんと照っていて、
日陰に入るとひんやりと涼しい。
時より吹くそよ風がなんとも気持ちいい。
ダメだと言われても
外で描きたくなるものです。
と、前置きが長くなりましたが
上記の理由で、自然と外で制作をしたくなるものの、
野外制作をすることで得られるものって具体的に何だろう?
なんで、野外制作に心がときめくのだろう?
これを言語化した内容を今回お届けします。
絵を描く時だけでなく、何の仕事にも活かせるエッセンスを抽出する気持ちで書きました。
⚫︎場から受け取るエネルギー
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どこにいるかによって、私たち人間の気持ちは変化します。
例えば極端な話、牢屋のような場所に入れられたら圧迫感を感じます。
窓のない、壁一面赤色の部屋にいても、心地よさは感じにくいでしょう。
閉塞感の感じる場所からは良いエネルギーを得るのは難しい。
これは特に頭を働かせなくても直感的にわかること。
逆に、先に述べたサントリーニのような澄んだ空と海、
統一感のある白い景観が点在する景色の中に身を包むことは、
自然からのエネルギーを感じやすいことも一目瞭然です。
開放感のある空間で、自然のエネルギーを存分に感じながら
自由に描く行為は、それまでの制約を吹き飛ばしてくれます。
色彩も自ずとこれまでと違う色合いを使いたくなる。
例えば、私はフィレンツェでは焦げ茶色を多用していました。
そもそも茶系を使うことは稀だったのに、自然と腕が茶色に手を伸ばしていた。
これは、場のエネルギーに感化されたわかりやすい例です。
特に何かしらの作業で行き詰まりを感じている時には
野外で作業をすることをお勧めします。
⚫︎「今」ここに集中しやすくなる
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当たり前ですが、天気は刻一刻と変化していきます。
風が吹き乱れたり、太陽の光が強すぎたり、気温が急に下がったり。
パーフェクトな天候の中で描ける時間は意外と少ない。
だからこそ、天気が良くて、強風も吹いていなくて、
うまい具合に日陰ができている時間帯があると
「今、描こう!」と気持ちが高ぶってきます。
その環境がいつ変わってもおかしくない
という状況にあるから、その時の集中力はすさまじい。
閃くがままに筆を滑らせ、瞬く間に何枚も描けます。
「今しかない」という強烈な想いがそれを後押ししてくれているのです。
これって結局、時間に制限をつけているようなもの。
太陽の移動予想やその日の天気予報で予想を立てながら、
「午前中は外で描けるのは2時間ぐらいだ」
と時間を区切って、集中しているのです。
⚫︎説明することで理解力が増す
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野外で制作をしているということは
いろいろな人がその姿を見に来る可能性があるということ。
そして、見るだけだはなく、話しかけてくる人もいます。
フィレンツェでは滞在先の共有バルコニーの一角で描いていたのですが
タバコを吸いがてら、「何々、あんた何描いてるの?」と興味をもってくれる人が何人かいました。
「どんなコンセプトで描いているの?」
「いつから描いているの?」
「何にインスパイアされて描いているの?」
なんていう質問から
「君の作品は全て体の一部に見える」
という感想を伝えてくれる人も。
(確認したら、その方はお医者さんでした笑)
描く行為そのものは、極めて右脳的で言語を伴いません。
方や、人に作品について説明する行為は言語的な行為。
制作過程の中でどっぷりと右脳の世界に入っている中から
いきなり言語的な世界に戻ってきて、人に説明をすることで
自分自身の頭の整理にもなります。
「あ、そっか。私はこの作品を通して、こういうことを描きたいと思っていたんだ。」
「私が絵を描く時に大事にしている想いはこれだったんだ。」等々。
(このKayo-bi Journalもそういう観点も含まれています。)
自分の中ではわかっているつもりになっていることも、
敢えて赤の他人に説明することで、自分自身もよくよく制作(仕事)について
理解することができます。
⚫︎ まとめ
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・意識的に場を選びとることでエネルギーの恩恵を受ける
・時間を区切ることで「今」に集中しやすくなる
・意識的に人に説明することでよりよく自身の作業を理解できる
これら3つのことが私にとって、野外制作をすることのメリットです。
制作の時だけではなく、どのような仕事をする上でも、
これら3つを意識化することでよりパフォーマンスが高まるのではないかと推測します。
これを読まれているあなたもよかったら試してみてくださいね。
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2018.10.2 Tuesday(*KAYO-BI)
*KAYO-BI:毎週火曜日に更新しています。