物語の効力 Living Inside the Story


中秋の名月も過ぎ、秋本番。
秋といえば、何の秋ですか?
今の私にとっては読書の秋。
最近、小説を手に取ることが多い。
心が物語という形式を求めている。

と言っても、新しい小説を読むというよりも
以前読んで感動したものを再読している形だ。
最近再読して特に感動したのが
「博士の愛した数式」。
本屋大賞を取り、映画化もされたことから
ご存知の方も多いかもしれない。
物語の登場人物の一人、博士は
1975年に事故にあったことから記憶が止まり、
80分しか記憶が持たなくなる生活に。
詳細が気になる方はぜひ読んでもらいたいが、
物語をくぐり抜けた後は
極めて当たり前のことだけども、
日常の忙しさにかまけて
忘れてしまいがちなことを思い出す。
・今を精一杯生きよう
・大切なものを大切にしよう
という気持ちに。
(ね、当たり前すぎることでしょ?)
と同時に、
物語を私たちが欲しているのは
何故なのだろうか?
と疑問にもつ。
そこで合わせて読んだのが
同じ著者小川洋子さんと
河合隼雄さんとの対談形式の本。
その中で印象に残った言葉が
「生きるとは自分にふさわしい物語を
作り上げたことに他ならない」という言葉。

小川洋子さんは昔からインタビュアーに
「どうして小説を書いているのですか?」
と聞かれてもうまく答えることができなかったそう。
でも、ある時に
「自分は作家だから小説を書いているのではない。
誰もが生きながら物語を作っているのだとしたら
私は人間であるがゆえに小説を書いているのであって
(中略)なぜ書くのか、はなぜ生きるのか、と
問われているのに等しい。」
ということに気づいたのだそう。
その根本にある理由として
「人間は表層の悩みによって、
深層世界に落ち込んでいる悩みを
感じさせないようにして生きている。
表面積な部分は理性によって強化できるが、
内面の深いところにある混沌はある
論理的な言語では表現できない。
それを表出させ、表層の意識とつなげて心を
一つの全体とし、更にたあ人とも繋がってゆく
そのために必要なものが物語である。」
(引用:生きるとは、自分の物語をつくること)

物語を欲する時って
理由もなく傷ついたと思っている時や
忙しくて物語の中に逃避したい時や
ひとり旅に出て人生について想いを巡らす時だ。
物語をくぐり抜けることによって
知らずと傷ついた心が癒え、
新しい視点で現実を捉え直すことができ、
自分の人生を全うしよう、
と思える。
少しずつ、日が暗くなり
少しずつ、一年の終わりに向けて焦点が当たりだす
この時期に、小説を読むのをお勧めします。
忙しい時こそ、必要なんじゃないかと思う。
SNSを見たり、ネットサーフィンをしているよりも
よっぽど良い気分転換になる。
あなたのお勧めの小説はなんですか?
Kayo Nomura
2019.9.17