生活の一部としてのアート Art as a Part of Life
「晴れやかな雨」展、第1週が終わりました。
在廊できた日は少なかったのですが、この一週間の中で
これまでの個展と今回の個展に一つの大きな差があることを実感しています。
結論からいきなり言うと、
日本人の方と、欧米人の方とでは、絵画を購入することへの敷居が違う、ということです。
それをなぜ感じたかというと、今回の個展は、欧米の旅行者の多い京都での開催だからです。
本日は、上記を踏まえて「アートを通しての文化の違い」について考察していきます。
●2つの共通点
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土曜日に作品を購入くださった、アメリカ在住のローラさん。
彼女は会場に入り、作品を一通り見、ひとつの作品の前に立ち、じっと眺めていた。
そしてこう言った「この作品は、今リフォームしている家の壁にぴったりだわ」と。
そこから、私の方を向いて、「この作品のコンセプトについて話して」と。
日曜日に来られたアメリカ人と日本人のハーフ、
イギリス人と日本人のハーフのインターナショナル夫妻。
特に奥様がアートに目がないようで、じっくりとひとつひとつの作品を見てくださり、私にこう言った。
(指をさしながら)「この作品とこの作品とこの作品が特に好きだわ。
それぞれの作品のコンセプトを聞きたい。そして、あなたの制作のテーマについても。」と。
一通り説明した後に、最終的に決められた作品について
「この間香港に行った時に買った作品の隣にぴったりだし、そこに飾るわ。」と。
どちらの方も、共通していたのは
・自分が絵を飾りたい場所が明確にあるということ
・作品のコンセプトについて、聞きたがるということ
無論、この共通項はたまたまの偶然なのかもしれない。
●欧米ならではのこと?
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そこで、もう一つのエピソード。
以前アートギャラリーで勤務していた大学の後輩が
展示に来てくれた際にこう言っていた。
「海外のアートフェアに出るのは費用のかかることだったけども、
それでも海外のほうが売れるから出展し続けていた」と。
そして、これは以前アメリカとイギリスに住んでいた私の実感でもあるのだが、
アートが生活の一部として、馴染んでいた。
どなたかの家に遊びに行くと、必ず壁に絵画が飾ってあった。
自宅のリビングやダイニングルームにも、絵が飾られていた。
(日本で住んでいた頃には、飾られていなかった記憶がある。)
●根っこにあるのは教育システム
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さらに話を発展させていくと、教育にまで話が及ぶ。
先日フランスでマティス美術館とコクトー美術館に行った時のこと。
平日だったこともあり、学校の先生が小学校一年生ぐらいの子供たちを引き連れて美術館に来ていた。
その様子を見ていると、先生が一つ一つの作品について話をするだけではなく、
生徒に質問をして積極的に感想や意見を引き出しているようだった
(フランス語がわからなかったので、実際にどのようなやりとりがされていたかは不明だが)。
私自身もアメリカの小学校に通っていたのだが、美術館のみならず、
演劇や音楽祭などに授業中に触れる機会が多かったように記憶している。
机の上で芸術について勉強する、というよりは、
五感を通して体験するような経験を多く積んだ。
良い悪いではなく、日本と欧米では、
芸術に対するスタンスが違うように思える。
むろん、欧米の方でも、絵を買うのは単なる投資、という人もいるだろうし、
日本人の中にも生活の一部としてアートが根付いている方もいるだろう。
だから、一般化はできない。
ただ、上記の考察から、傾向として欧米の方は、
アートに親しみを持ちやすく、必然的に絵を購入することへの敷居が低いように感じる、ということだ。
●アートの「見方」
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少し話が変わるが、私は以前動物の絵を描いていた。
(今でも描くことはあるが、個展では発表していない。)
そうすると、初期の頃から私の個展に来てくださっている方の中には
「もう動物は描かないの?」と聞かれる。
これは単に話のきっかけとして聞いているのかもしれないが、
もしかして、現在描いているような抽象的な作品だと、
どのように絵を見たらいいのかわからないからなのかもしれない、と思うのだ。
絵の完成系に正解がないのと同じように、絵の見方にも、正解はない。
どのように見るのかは、人それぞれ。
そして、それこそがアートの最も素晴らしいことの一つだと感じる。
冒頭のエピソードのもう一つの共通項である、
「コンセプトを聞きたがる」というのはここに通じているように思う。
作者である私がどんな思いで描いているか、
どんなコンセプトをもって制作活動に励んでいるのか、
その中で、特定の作品についてはどんなストーリーが宿っているのか。
そこに、むろん正解はない。
あるのは私の個人的な方向性だけだ。
それに共感すれば、購入に至るし、納得しなかったら購入しない、だけのこと。
●描き続けていくということ
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絵が売れるか売れないか、というのは、個展活動をしている限り、切実な問題ではある。
だけども、自分を曲げて売れやすい絵(というのがあるとしたらだが)を描くのは、
当たり前のことだけども本末転倒だ。
今回の個展の、この週末の出来事を通して、
自分の信念を貫いて、描き続けていいんだ、とより深く思えた。
正直、描き続けるということは、不安と隣り合わせでもある。
それでも、私は描き続けていくのだ。ただ、そう思えた週末だった。
個展が終わるまでにどのような気づきや学びがあるのか、
どんな方との出会いがあるのか、、、
本日から2週目スタートします。
(個展は6月末までです)
引き続き、ご来場をお待ちしています。
● 一言 編集後記
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今回の展示は梅雨をイメージして描いたのだが、開始以来ずっと晴天。
「晴れやかな雨」じゃなくて、ただただ「晴れやか」。笑。
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2017.6.20 Tuesday(*KAYO-BI)
Kayo Nomura
*KAYO-BI:毎週火曜日に更新しています。
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