Hikosan Shujobo, Fukuoka, Japan

March 2024
Hikosan Shujobo, Fukuoka, Japan

music:  Tetsu Imai

異次元の世界だった。
英彦山守静坊のサクラ祭りの一環で、ライブパフォーマンスに参加させていただいた。
どのように表現したらいいのか、言葉が見つからないまま書き連ねる。

会場の守静坊は戦国末期に建てられたといい、英彦山に現存する最古の宿坊のひとつ。
最盛期の江戸時代には800軒余りの宿坊が軒を連ね、山伏や参詣者が訪れていたと言われている英彦山。しかし明治政府の廃仏毀釈、神仏分離令、修験道禁止令の影響により、英彦山の山伏文化はほぼ壊滅。霊峰からは山伏の姿が消えてしまい歴史と文化は途絶えようとしている。それを復活する一大プロジェクトとして、一般財団法人徳積財団がその復活のシンボルとなる宿坊の甦生に取り組んでいる。(徳積財団より)
枝垂れ桜は、京都で有名な円山公園のシンボル「祇園枝垂れ桜」が、約220年以上前に京都から英彦山へと株分けされた苗。
何が言いたいかというと、とにかく濃密な空間なのだ。時を超えて、栄えて廃れて、そしてまた蘇生して、ただ居るだけで大いなるナニカのエネルギーを感じさせる場。

徳積財団の代表の野見山さんと、ピアニストのてつさんと共に前日入りし、場を整え、インスピレーションを受けつつ過ごした。
当日の朝は、朝日と共に座禅からの始まり。スタッフの皆さんとイベントの準備をしながら、迎えた開演。
満開の枝垂れ桜を前に、即興演奏をされるピアニストのてつさんの奏でる音楽と会場にいらっしゃった皆様の場を感じながら、描き切った時間は、空間と時間を超越したひとときだった。

ライブペインティングの時は、いつもノープランだ。その場、その時、その瞬間に、感じたものを感じたままに描く。
始まりの時間、てつさんの奏でる音楽と、満開の枝垂れ桜、少し肌寒い風、会場にいる皆様、庭で走り回る子供達の歓声、それらを全て肌で感じながら描き出した。
咄嗟に選んだのは桜色。手に色をのせ、ぽんぽんぽんっと軽いタッチで紙面に。撮影してくれた桃ちゃんの言葉を借りると「かよちゃんの指で触ったところから、桜が咲いていくような世界がとても焼きついております。今まで経験したことがないお花見でした。」と。
エネルギーが風のように流れて回転しているような様を捉えていった。
中盤で、流れが急に変わって、「中央に上から下に流れている光がある」と感じた。そこに金色を垂らしてから、右と左に縦横無尽に流れているそれぞれのエネルギーを調和させることで作品が完成するんだということがわかり、点々と描いていたピースの上からパレットのように混ぜ合わせた。紙面全体が大きなエネルギー体で、あの場にある全てのものをキャッチして載せていった感覚。
途中、てつさんが歌を歌った。その時、痺れた。溢れる感情とともに載せていくひととき。
どれぐらいのお時間が流れたのかわからなくなったところで、紙面が「もう十分だよ」と教えてくれた。

「絵が生きている」
「とても原始的に、その場その瞬間を感じて、自由に描いている姿が印象的だった」
と参加された方々から感想をいただいた。
改めて、完成した作品を翌日見て思ったこと。それは、「時が来たらこの上に再び描き連ねたい」ということ。
タイトルは「Eternal Loop -循環する生命-」。
私たちの命が先代から脈々と続いているのと同じように、作品にも新しいエネルギーを乗せ続けたい。不思議とそう思われせる作品に仕上がった。

今回のご縁を紡いでくれた、大学時代からの友人奈々子、信頼して場をホールドさせてくださった野見山さん、一緒の空間を作り上げくれたてつさん、スタッフの皆様、会場に居合わせてくれた皆様、遠方から駆けつけれくれた友人たち、気にかけてくれた皆様、本当にありがとうございました。
二度ない、毎日を、毎瞬を、生きていることを、全細胞に、この命に、感じさせてくれてありがとう。