"もののあはれ"の印象派と旅人のような転勤生活 It's All About "Here and Now"


カフェでたまたま手にした雑誌。
そこにシャガールの特集記事が掲載されていた。
「日本人には古くから、移りゆくことこそ常態である。
という考え方が人の間に広く浸透している。
それは仏教的世界観と、気象条件や自然災害の多さなどの
風土的要因から形成されてきた心性なのだろう。
世は無常であり、愛でるべきは”もののあはれ”であるという考えが
長きに渡って保たれてきた。流れてしまうものに束の間、目を留めて、
それを慈しむ。
そうした姿勢は印象派やシャガールの絵画からも感得できる。」
(THE RAKE MAGAZINE 2019.5月号 p164より)

また、同じ雑誌の中に、
女優のジュリアン・ムーアのインタビュー記事を発見。
彼女の子供時代はまるで旅人のようだったらしい。
転勤の多い父の仕事の関係で、アメリカ国内の都市を転々としたという。
「転勤生活は変化に富んでいましたが、子供の身で順応するのは大変でした。
”ああ、またか”と思ったものです。でも変わらなぬものは何もない、ということを
知ると、今やっていることが気に入らなければ、変えられる、と考えるようになりました。」
(THE RAKE MAGAZINE 2019.5月号 p40より)
この2つの記事、一見関係ないように見えて、
私の中に深く留まった。
私自身、転校の多い子供時代を過ごしたからかもしれない。
季節の移り変わりの激しい今を感じているからかもしれない。
時間は過ぎ去る。
1つ、また1つと、年を重ねる。
今日という日は二度と訪れることはない。
過ぎ行く日々の中で、留めておきたい想い、
記憶しておきたい思い出、永遠に続けばいいのにと思う出来事。
変わらぬものは何1つない。
移りゆくことこそ常態。
すべての瞬間を留めておきたい。
でも、流れていくからこそ、
次の瞬間に立ち会うことができる。
そう思うと、生きている
という、「今、ここ」にいることが
どれほど有り難いことなのだろうか
と感動を覚えるのは、
話が突飛しすぎているであろうか。
描くということは、
今ここのエネルギー/生命体を紙面に宿すこと。
そのためには、
描きたい(伝えたい、表現したい)
という気持ちに忠実でいること。
そして、それを伝えるためには
どんな色、形、画材、大きさが
ベストなのか、を考えていくこと。
シャガールの抽象画と
ジュリアン・ムーアの幼き頃。
一見何も関係ない内容のようで、
私が大事にしたい想いが根底にあるように思えて
紹介させていただきました。
*5月30日から始まる個展で一緒に展示予定の
日記の抜粋から。
2019.5.21 火曜日
Kayo Nomura